ここだけの話
3月3日は桃の節句
室町時代に始まった風習で江戸時代から雛壇を飾るようになったとか
私は職業柄かどうしても雛祭りと言えば白酒が気になります
女児を披露し白酒で親睦を深めるのが目的だそうです
中国では3月3日の曲水の宴の時 川の上流から流れてきた桃の花を汲んで
飲んだところ300才まで生きたという故事があります
ここから桃の花を白酒にひたして飲めば病を払い顔色を潤す
また長寿延命の縁起物として用いられるようになったとされています
私の家では昔から甘酒でした この世界に入るまで甘酒が常識と思っていました
じゃあ甘酒と白酒はどう違うのでしょうか?
白酒・・・白酒は餅米と米麹を焼酎とともに仕込み約一ヶ月間熟成させ
その後すりつぶして飲みます
アルコール度数は9度程 非常に甘い 酒税法上ではリキュールです
甘酒・・・蒸米と米麹とを等量混ぜ約一昼夜55℃前後で放置してつくります
この方法で造った甘酒はアルコール分を含みませんので酒ではありません
また酒粕を湯で溶いたものも甘酒と呼ばれます 若干のアルコールを含むことがあります
このように白酒と甘酒は違う飲み物です ただどちらを飲んでもおかしくありません
共に女性の色白な肌の色をイメージしたとか 酒の白と桃の赤で紅白になり縁起が
よいと言われ続け現在に残っているそうです
「辛口ワインが好き」とか 「日本酒は辛口に限る」などと良く聞きます
甘口は糖分の甘さが感じられる物を言い理解しやすいと思います
じゃあ辛口は? 唐辛子の辛さ 香辛料の辛さ からしの辛さ・・・・
酒の辛さ それは酸ではないでしょうか
辛さと言うよりも酸っぱい さっぱりしているなどの表現が辛さを示します
日本酒度
酒の甘辛の目安となる数値 元来清酒の比重を表すための指標で
糖分が多くなれば比重も大きくなり 日本酒度はマイナス 甘口となります
逆に糖分が少なければ日本酒度はプラスを指し辛口ということになります
しかしながら淡麗かつ軽快な酒質が主流を占める今の時代は
プラスの値が高くても決して辛く感じない酒が多くなっています
お鍋の季節は吟醸酒ぐらいが適切ではないでしょうか
私はあまり日本酒を得意としませんが 昔から唯一飲んだり贈り物にしたりしていた日本酒があります
石川県の「菊姫」 その中でも山廃仕込
山廃仕込とは正式には山卸廃止酵 (酒母)と呼称する
健全な酵母の働きには 乳酸が不可欠であるが この造りは自然の乳酸菌を利用するため
山卸(櫂入れ)を廃止した古式の仕込み方法であり 通常の(速醸)造りより日数が
2~3倍必要となる
この仕込み方法は「現代の名工」受賞された能登杜氏 農口尚彦氏の得意技で
他の追随を許さない技術である
杜氏 農口氏は「菊姫」をやめられ 今は石川県の鹿野酒造株式会社で
七人の蔵人と酒造りに励んでおられる
源水は白水の井戸からの名水仕込
「常きげん」山廃純米吟醸 無濾過生原酒 山純吟は絶対お勧め
100%自社所有の畑で造られる山田錦を使用 精米歩合55%ともったいないぐらいである
ただし 限定物なのでなかなか入手が難しい
山廃仕込純米酒は五百万石を100% 精米歩合65% 腰の強いコクと喉ごしのキレ味が特徴
これからの季節 桃や桜の花びらを一枚そっと浮かせて 風流に愉しむのも良いではないか
石川県の南加賀に位置する「常きげん」
蔵元 鹿野酒造株式会社 代表鹿野頼宣氏 4代目
杜氏 農口尚彦氏は古くより「能登杜氏」で知られる石川県は能登町の生まれ
昭和24年静岡県の酒蔵を振り出しに親子三代にわたる杜氏一家として
昭和38年に杜氏として就任 酒造り58年の熟達者として輝かしい実績を残し
中でも全国新酒鑑評会において連続12回通算24回の金賞受賞に輝き
古今類例を見ない栄誉を受け他の追随を許さない酒造りの名人として広く知られている
さらに平成18年に卓越技能者に贈られる「現代の名工」に認定され
厚生労働大臣から表彰される栄誉を受けた
特に農口杜氏の得意技である山廃仕込は青年期に老丹波杜氏より
伝授された技術で無形文化財に値する秘伝
定年退職後の農口尚彦氏を人柄をよく知る鹿野頼宣氏は 年齢に定年はあっても
技術に定年はないはずと第一線引退を惜しみ 固辞する氏に説得を続け
復帰することを約して平成10年秋より鹿野酒造株式会社に着任
創業は文政2年(1819) 代々地主であった為に稲作や茶の栽培を手掛け
ある年 米の大豊作となり農民達とこぞって祝った様が
いつまでも続くようにと祈って「常きげん」と命名された
厳選された地元の酒米を使い
能登杜氏と七人の蔵人によって丹精こめた手造りで仕込まれる
酒蔵の軒先にぶら下がった巨大な玉 蜂の巣か巨大マリモ? 一体何だか知っていますか?
名前は酒林 (さかばやし)と言います またの名を杉玉
杉の葉を束ねて球状に刈り込んで作られたもので いわば酒蔵の看板です
酒と杉との関わりは古く 軟らかく加工しやすいことや雑菌成分を持つなどの
杉の特性を造り酒屋は様々な場面で利用してきました
例えば 桶や樽 枡に使われています
他にも酒米を浸した水を桶の底から抜く際 米の下に重ねて敷いた杉の細かい葉が
フィルターの役割をして水だけが抜け 米は外にこぼれない
そんな使い方もされていました
さて酒林ですが 毎年新酒のできる年末になると青々とした杉の葉で作った
新しいものが軒先に吊され 「今年も新酒ができました」というメッセージを 知らせる役目を果たします
そしてまた酒づくりが始まり 若々しい緑色をした酒林がゆっくりと枯れていき 時を重ねて茶色くなって
趣を増していく様子には 蔵の中で酒がゆっくりと熟成していくイメージを 重ねることができます
酒林には酒にまつわる商売のシンボルであり また 酒そのものの象徴でもあります
まだ青々とした酒林を見ることができるかも知れません
見かけたら足を向けてみるのも一興です
2018年9月20日 食道園宗右衛門町本店
灘五郷(男酒) 江戸時代後期からの銘酒を生み出す灘 白鶴
西宮市今津から神戸市灘区 大石あたりまで
大阪梅田から天王寺とほぼ同じ距離 東西12km 南北2km
灘には 白鶴・大関・日本盛・菊正宗・沢の鶴・櫻正宗・白鹿など
大正時代には120社470蔵が存在 うち白鶴は28蔵を所有
第二次世界大戦の空襲で25蔵を失う 空襲のなかった伏見(女酒)の
月桂冠にトップの座を奪われるが 白鶴は55年かけてトップの座を
奪い返す 現在は全国シェアの10% 10本に1本は白鶴の酒である
日本酒の醸造には6要素ある
水・米・麹菌・酵母・人(方法)・設備(道具) 1つでも違えば酒は変わる
水は地下20mから汲み上げた六甲の自然水と住吉川上流から
放水されている酒造専用水 ミネラル豊富で雑菌は皆無
酒造用米は六甲山北側の北播磨地方 吉川や東条といった
日本随一の山田錦の産地で村米制度で結びついている
一般米の3倍近い値段で取引されている
高級酒には山田錦・五百万石・白鶴錦など 普通酒用には
ひとめぼれ・はえぬき・こしひかりなどの食用一般米を使う
他の醸造酒と違い糖化と発酵が同時に進む並行複発酵により
アルコール濃度が高く(20%以上)できる
日本酒の成分 成分を多い順に並べると
・水
・アルコール 8~20% 酔い作用の本体
糖分 2~8% 多いと甘口 少ないと辛口
・アミノ酸 0.2~0.4% 多いと濃醇 少ないと淡麗
・酸 0.1~0.3% 味の幅に寄与する
日本酒の特性値
・アルコール度 エチルアルコールの容量比(%) 9~20%
高いと強い酒 弱いと軽い酒
・日本酒度 日本酒の比重 ±0は水と同じ比重
+側が辛口 -側が甘口
・酸度 酸性物質の量 高いほど厚みのある味
低いほどあっさりした味
・アミノ酸度 アミノ酸の量 高いほど濃醇な味
低いほど淡麗な味
日本酒の種類(特定名称酒)
・吟醸酒 精米歩合60%以下の米 50%以下は大吟醸
醸造アルコールは制限以内で添加してもよい
・純米酒 米だけで造られた酒 香味が濃くなる
・本醸造 精米歩合70%以下の米 白米の1/10までの
醸造アルコールを使用する 戦時中 政府の指示があった
料理の相性 3つの基本型
・バランス 日本料理の味の強さを合わせる
濃い料理には濃い酒 甘い料理には甘い酒
・ハーモニー 日本酒と料理の両方がお互いに調和する
甘味と酸味 味を生み出す
・ウォッシュ 料理の後味や嫌味を洗い流す
アルコールは油を溶かす 口の中をリフレッシュする
酒と料理の相性 具体例① ( )は商品名です
・刺身 醤油を味付けするので辛口が良い
白身魚には淡麗辛口 (上撰生貯)
赤身には中庸辛口 (きりっと辛口)
酒と料理の相性 具体例②
・天ぷら 天ぷらの味は普通の濃さ
塩で食べる時は中庸辛口 (杜氏鑑)
つゆで食べるときは中庸甘口 (上撰白鶴)
酒と料理の相性 具体例③
・焼き鳥 味は濃いので濃醇酒がよい
塩で食べる時は濃醇辛口 (特別純米山田錦)
タレで食べるときは濃醇甘口 (にごり酒さゆり)
ウォッシュたら淡麗中口 (まる)
伴杜氏は 先祖が創意工夫して生み出し改良を重ね
日まで受け継いできた酒は文化遺産です
より多くの方に愉しんで飲んでいただきたい
また次世代に大切二位引き継いでいきたいと語った
大きく分けて2つのポイントがあります
・純米酒か 醸造アルコール添加をした酒か
純米酒は米・米麹・水で作られます 醸造アルコールの添加は
味や香りのバランスを整える技術です
・精米歩合はどれくらいか
普段食する白米は玄米を10%程しか削っていません
特定名称 原材料 精米歩合
吟醸 米・米麹・醸造アルコール 60%以下
大吟醸 米・米麹・醸造アルコール 50%以下
純米 米・米麹 規定なし
特別純米 米・米麹 60%以下 または特別な醸造方法
純米吟醸 米・米麹 60%以下
純米大吟醸 米・米麹 50%以下
本醸造 米・米麹・醸造アルコール 70%以下
特別本醸造 米・米麹・醸造アルコール 60%以下 または特別な醸造方法
上記に当てはめながらお酒選びをしてみてはいかがですか
日本酒を飲む温度 5~60℃までそれぞれの呼び分けがある
冷酒(5~15℃) 冷蔵庫ができたおかげで発展した日本酒
瓶をそのまま冷やして温度を下げたり 氷を入れてロックスタイルで楽しむこともできる
冷やすことによって香りなどが軽やかになるため日本酒の苦手な方にはおすすめ
・雪冷え(5℃) かなり冷やした状態なので雑味が少なく香りも弱く感じる
・花冷え(10℃) 花さえも冷たくなる温度 味わいがシャープに感じられる
・涼冷え(15℃) 字のごとく涼やかな飲み口が味わえる
冷や(20~25℃) ワインの常温よりは少し高め 自然な状態の日本酒
最近では「日本酒を冷やで」と注文すると冷酒を持ってくる場合があるが
昔冷蔵庫のない時代は 冷やか 燗しかなかった言葉が残っている
・日向燗(30℃) 燗にしてはぬるすぎると思う方も多い温度
・人肌燗(35℃) 体温と同じぐらい 口に含んだときにぬるいと感じる温度
・ぬる燗(40℃) 口の中で熱さを感じられる温度 美味しさが一番感じられます
・上燗(45℃) 徳利が熱い温度 風味と後味のバランスがいい
・熱燗(50℃) よく聞く言葉ですがドライな味わいに感じることがあります
・飛びきり燗(55~60℃) 最も高い温度なのでお飲みになる際は注意してください
同じ銘柄のお酒でも 季節・その日の気温・場所など 飲む温度で味わいが変わります
自分に適した温度を探してみるのもいかがでしょうか